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2017年6月、オリジナルデザイン・ノート専門のオンラインショップ

「Só Notebook」を開業されたという方から貴重なお話を伺いました。

 

開業準備開始は2016年夏ですので、それから10か月経過して、漸く開業にこぎつけることができました。

海外へのプロモーションを開始したのは、それからさらに8か月ほど経過した今年の2月からです。

準備にこれだけの時間が必要だったのは、Só Notebookが、当初から海外進出を視野に入れていたことが

一つ、もう一つは、海外進出にあたって必要な商標登録手続きに、相当の時間が必要だったためです。

 

ノートショップのアイデアは、500pxという写真愛好家SNSに関与していた間に思いつきました。

そこで、日々目まぐるしくランキングを上がったり下がったりする

世界中の写真愛好家達の作品を目にしながら、「これなんか、ノートの表紙にピッタリだなぁ。

こういうデザインのノートが巷にあったら、私はもうノートジプシーを卒業できるんだけど」

とため息をついていました。

 

このデジタル独り勝ち時代(?)にも関わらず、私は、頑固な手書き派で、

どこへ行くにもノートが一緒です。

ところが、ここ数年、もしかすると、十数年、本気で気に入るデザイン・仕様のノート製品に

出会うことができず、いつも、製品選びに妥協していると感じていました。

自分の持ち物を本気で気に入ってはいないこと。

それは、サイズや形に微妙な違和感がある靴を履き続けているような、ちょっと嫌な感じです。

 

ある時、500pxの作品を見ながら、いつものようにため息をついていた私は、

アメリカのビジネスマンが撮影した、ある非常に印象的な写真作品を見て、とうとう決心しました。

「この人に作品を使わせて下さるようお願いして、自分が使いたい理想のノートを作ってしまおう」

これが、Só Notebookの出発点でした。

 

500pxは、グローバルなコミュニティです。

そこで見た作品を製品に使ってビジネスを興す。

この時点で、Só Notebookにとって、海外進出を目指すことは必然でした。

アメリカ人デザイナーが表紙をデザインしているのに、アメリカでその製品を販売しないなんて

ナンセンスです。表紙デザイナーの居住国で製品を販売することは、プロモーションの観点から

非常に重要です。自分の作品が使用されている製品ほど、口コミで宣伝したいと思う商品は

ないでしょうから。そして、ネットショップとして開業するのであれば、ますます、

海外進出を想定にいれない理由はありません。オンライン専業であれば、適切な越境EC用の

プラットフォームを選択すれば、最低限の海外進出は、恐ろしいほど簡単にできてしまいます。

そこで、まずは、アメリカと日本で、ノートを販売してみることに決めました。

 

アメリカのデザイナーの作品を、日本で販売する製品に使用する。

当初は、何も難しいことはないと思っていました。

ところが、いろいろ調べてみると、まず、

①海外デザイナーの著作物を使用することに関する契約書が必要であること。

②その海外デザイナーが、日本と自分の居住国の両国で所得税を払わなくて済むようにする

手続きが必要であること

が分かりました。

 

 

①に関しては、海外の著作物利用許諾に関する契約書サンプルを探し、

日本の文化庁で紹介している契約書案も参考にしながら、英文の契約書を自分で作りました。

②については、海外デザイナーがアメリカ人の場合、「租税条約に関する届出書の提出」が必要です。

この届出の準備として、デザイナーさんにアメリカで在住証明書というものを取得していただく必要がありました。

この証明書の取得に1か月以上かかりました。

それから、「租税条約に関する届出書」を日本の管轄税務署に提出して、やっとのことで、

事業主による源泉徴収なしに、デザイナーに支払いを済ませることができます。

 

 

そして、海外での商標登録出願手続き。

ブランドロゴを用意して、国内でその商標登録手続きを済ませ、優先権を主張できる半年以内に

海外出願国を選定。商標権を取得する手続きには、一介の個人事業主にとっては、

相当高額の費用がかかりますから、対象国は厳選しました。

日本製品をオンラインで積極的に購入する層がいる国。

オンライン・ショッピングを抵抗なく利用する消費者層が厚い国。

そもそも、経済的に元気な国。

値の張るノート製品でも、好みであれば買う層が、一定数以上いると見込める国。

そして、商標ブローカー予防対策として、商標権を取っておく必要がある国。

 

これらを考慮した結果、まずは、デザイナーの居住国であるアメリカ。

そして、オーストラリア、シンガポール、台湾、香港、中国、韓国で出願することに決めました。

日本での登録にかかった費用に加え、これら海外7か国での商標権登録に必要だった出費は

約120万円に上ります。

 

海外での商標登録は、完了するまでに、出願から半年~1年以上も待つ必要があります。

私の場合は、一番早く結果が出たのが香港で、出願から6か月で審査を通りました。

それから、台湾、オーストラリアと続けて登録完了。

台湾に本社があるPinkoiというデザイナーズマーケットに出品し、商標権を取ることができた国から

順次、送料情報を追加。送料情報が設定されている国限定で商品販売ができる仕組みです。

 

海外への販売は、ごく最近始めたばかりなので、本格的なプロモーションはこれからの課題です。

製品が出来上がった時、アメリカの表紙デザイナーに、彼女の作品が使われた製品をプレゼントしたら

こんなお言葉をいただきました。

 

“Today I received 10 notebooks from the owner of so? notebooks who with much hard work and persistence has brought to the marketplace a business that I am so honored to be a part of!!!! Thank you for your vision and for accepting and promoting my work into these most wonderful products!!!! I am amazed and so honored!!!”

 

準備を進める過程で、私は、この仕事では、お客様は自分の「両サイド」にいると思っていました。

表紙デザインに参加して下さるアーティストと、そのアーティストの作品が実用化された

製品を好きになり、選んで下さるユーザーです。アメリカ人アーティストからのこの言葉を目にして、

片方のお客様への責任は、とりあえず果たせたと感じました。

今後は、世界中にいるであろう、もう片方のお客様に製品の存在を知っていただくべく、

積極的にプロモーションをかけていく予定です。

最初から、海外進出ありきで始めたお陰で、どちらのサイドのお客様もグローバル。

仕事を進める刺激に満ちたプロセスそのものが報酬と言ってもいいほど楽しいです。